1993年3月13日土曜日

都 の 雨



28" x 22"

私は雨が大好きだ。 しかしカリフォルニアに移ってきてから、あまり雨降りにあっていない。 ひでりが7年続いたとかで、家の周辺はからからに乾いている。 土砂降りの雨の後のすがすがしい気分、また、しっぽりと世界を包んでしまう五月雨の頃、そうした雨の日の情緒が、カリフォルニアには無いのだと気がついた。 「都の雨」は、石川啄木の、故郷を思いながら詠んだ次の短歌を素材にして画いたものである。
「馬鈴薯(じゃがいも)の
うす紫の花に降る
雨を思えり都の雨に」
Mr. and Mrs. Timothy Larkin 所蔵。

早 春



34" x 22"

東京の冬は長く続かない。本当に寒いのは一月ぐらいで、二月も終わりに近ずくと、そろそろ春の気配を感ずる。その頃にふる雪は、ふわっとした牡丹雪で、手のひらにのせても冷たくない。解けてゆくのも早く、日当たりの良い場所は、雪解けの下に思いがけなく草の芽がでていることもある。
妖精の
踊るあしあと
雪間草(ゆきまぐさ)

晴 れ 着



30" x 24"

なつかしい思い出のなかに、私の家族の、元日の行事がある。その日は、家族全員が、畳敷きの客間に集まった。 父は、床の間を背にして、正座していた。誰もかも、一番上等の服装で、楽しそうだった。 幼い私も、新調の着物を着せられて、父に向かい、両手をついて正式のあいさつをした。 それから、お屠蘇の交換から御節料理えと、元日のお祝いがはじまった。
よろこびは
色さまざまに
年のあけ