1996年3月13日水曜日

山 も み じ



48" x 30"

音もなく
木の葉ちりゆく
神無月(かんなずき)
ちりて… ちりて… ちりつくして
輪廻(りんね)の舞を
龍田姫(たつたひめ)

まぼろし の 花



36" x 24"

20世紀初期の詩人北原白秋は、官能的でリズミカルな詩歌で有名である。 晩年には視力が弱っていたが、そうした逆境にまっこうから取り組んだ作品を書きつずけた。
「火のごとや夏は木高く咲きのぼる
のうぜんかずらありと思はむ」
この短歌を詠んだときの白秋は、すでに視力を完全に失っていたと言われる。
めしいの身
燃える炎か
蔓の花
上記の自作の句は、「まぼろしの花」と題する絵にそえて白秋に捧げ、視力を失っても私は、心で見る何かを画きつずけたいと誓う。

Mr. and Mrs. William Yee 所蔵。

ゆうやけ の ロスリン



35" x 28"

四季を通じて、太陽が沈んだ直後の夕映えには、なにか人の心を揺さぶるものがある。しかし、一番華麗な美しさは、夏の夕焼けであろうか-- 体熱を燃えつくした太陽が、やっと地平線のかなたに沈んでゆく。 あかねいろの西の空には、日にやけただれたビル街のシルエットがくっきりと浮かび、繁りきった夏の森をまえにして、素晴らしいコラージュをつくっている。
しずけさや
酷熱の陽おちて
ポトマックに
「ゆうやけのロスリン」は、夏たけなわなポトマック河畔を思い出しながら画いた。ワシントン近郊をはなれてからもう数年もたっているので、私の記憶は、おとぎ話のように要約されてしまっている。 製作中幾度も眼をとじて、その凝縮された思い出を捉えようと努力した。