1995年3月13日月曜日

りんご の 香り



48" x 37"

20世紀ロマン派の詩人北原白秋の作に、次の短歌がある。
「君かえす朝の敷石さくさくと
雪よ林檎の香のごとくふれ」
白秋は、官能的でリズミカルな詩歌で知られている。 この短歌は、その好い例だと思う。

...朝が来た。女は家を去る。夜の間に雪が降りだしていた。しんしんと無心に降りつずく雪... あたりは静まりかえっている。処女雪を踏みしめてゆく愛人の足音を聴きながら、さわやかな林檎の香りを、男は連想する。そして雪が、林檎の香りのように女を抱きしめよといのる。

思いがけない雪と林檎のくみあわせは、私の想像を刺激する。 彼らのランデヴ-は、熱く完全な結合だったにちがいない。 「りんごの香り」で、そうしたロマンチックな満ち足りた感覚を、雪の降る夜明けを背景にして表現したいとおもった。

The Princeton Review, NY 所蔵。

0 件のコメント:

コメントを投稿