2003年3月12日水曜日

アンダルシヤのアルコス



19" x 19"

スペインのアンダルシヤ地方には、アルコスからロンダに向かって、寄せては返す波のように、山脈が起伏している。 もともとアフリカからの羊飼い達が住みついた所であったが、中世期には、カステル王国とグラナダ王国が境界を共有していた。 したがって、1250年ごろから、1480年カトリックグループによる異端者捜査裁判を経て、1492年グラナダ王国によるモスレム教徒追放に至るまで、この地域では戦争が絶えなかった。
雄たけびの
今もひびくか
夕焼けに

2003年3月11日火曜日

アンダルシヤ の ロンダ



22" x 22"

空たかく
白壁のまち照りはえて
古つわものの
夢のあと
アルコスから東にむっかて、丘の上にいくつもの村落をみながら、辿りつく所がロンダ。 めんめんと続く夢は、古つわものから闘牛士えと絶えることがない。

2003年3月10日月曜日

旅 愁


34" x 26"

旅をして行きつく町の明かりは、よそよそしい瞬きしか与えない。 年取った旅人には、その疎外感が、ことさらに強く感じられる。 エトランジェであるわたし、独り暮らしにかえった私-- 町明かりはただ旅愁をそそるのみ。
長旅の
果てのあかりや
エトランジェ

2003年3月9日日曜日

モントレーの春



18" x 23"

カリフォルニヤの高速道路1号線は、サンフランシスコからロスアンゼルスまで走る。 春もたけなわの頃は、道路ぎわの菜の花畑が、まるで波にさそわれたかのように、浜辺までなだれこんでいる。 ほかにも素晴らしい風景が、この高速道路に沿って沢山あるが、菜の花というありきたりの花が、畑に密集しているところは、まるで、精一杯に春のよろこびを、歌っているようである。
菜の花や
海にとけこむ
モントレー

2003年3月8日土曜日

名無し草



21" x 36"

それは丁度格好の隠れ家であった。 風に吹き散らされてきた何かの種が、落ち着くホーム--- 五月になると、浮き草にかくれて、蟹がころもがえをする沼地--- 朝霜にさそわれ、雁が集まる葦のかげ---それを叢から、息をこらえて盗み見する子供たち。

みんな遠い昔の思い出となった。

そこはチェサピーク湾のブラック~ヲルナット岬。 今は、個人経営のホテルになったが、1965年から76年まで、都会を逃れる私の隠れ家であった。
古沼地
朽木に宿る
名無し草

2003年3月7日金曜日

森 あ か り



18" x 20"

ヴァージニアの森に囲まれた家々は、一年の半分以上を、数百年の樹齢をもつ木立に埋もれてすごす。 それゆえ、秋が過ぎて、木の葉の散りつくした裸木のなかに、黄色い家明かりをみるのは、予期していたことながら、楽しいものである。

そうしたある夕方、その家明かりのひとつが、暗くなりかけた空にむかって動いてゆくのを、私は見つけた。 何というすばらしい発見!
森の灯が
ひとつ昇って行く
今夜は黄色い月

2003年3月6日木曜日

ふ じ II



25" x 21"

春の花が盛りをすぎたころ、ふじの花が、中年の美しさと、ひそやかな香りに包まれて、咲きだす。
ふじの香に
つられて歩く
ゆうべかな
そして風がたちはじめると、遠くから、雷のとどろきがきこえてくる。
春雷の
とどろくゆうべ
ふじの波