1988年3月13日日曜日

お ぼ ろ月 夜



40" x 30"

「ぽっかりと 月昇る時 森の家の
寂しき顔は 戸を閉ざしける」
この短歌の作者、佐々木信綱といえば、日本の古典万葉集を編集した有名な学者であり、名前を聞いただけで、尊敬とともにある種の隔たりを感じたものだが、上記の短歌に接したときは、なんとなく童謡を聞くような親しみと温かさを感じた。この学者の人柄のせいであろうか。

夜おそく、板戸を閉ざして寝静まる家屋の上に、ぽっかりと出ている月… 静寂と神秘な感じを、この絵のなかに捉えてみたいと思った。